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エル・スール他 [映画]

見逃していた映画をいくつか借りて見た。何故か全部子供が主人公の

「ミツバチのささやき」「エル・スール」、

「ものすごくうるさくてありえないほど近い」の3つ。


まずはビクトル・エリセ監督の「ミツバチのささやき」(1973年)。

日本で公開当時は、大きな瞳にあどけない表情のアナちゃんの可愛さが

評判になったが、スペイン内戦の影響が色濃く出ている作品だった。

(役名はアナではないけど、忘れたのでアナで通します^^;)


とはいえ幼いアナの目線で描かれているので、大人の事情は明確には

描かれず、何となく推し量ることしかできない。

ミツバチの巣箱のように狭い世界を中心にして生きている子供時代。
時々大人の知らないところへ飛び出して危険な目にあったりもする。

身の回りで起きるちょっとした事件やイベント、家庭内の不和など、

子供だからと誰一人まともに説明してくれないけれど

気配を感じることはできるし、記憶は心に深く残る。

その辺りをとても上手く表現していると思う。

精霊だって、アナだからその存在を感じることができるのだ。


埃っぽく赤茶けたスペインの大地、劇中劇で上演される「フランケン

シュタイン」のモノクロ映像など、全体的に抑えられた色調の中、

時折息をのむような美しい色が現れるのも特徴的。

アナの家のガラス窓がハニカム模様で、陽光が射し込むとハチミツ色に

なる所、いたずら好きの姉が死んだふりをする部屋の少し開いた窓から

風が吹き込み、美しい緑が見える所、そしてアナが寝室の窓を開け放ち

精霊に呼びかけるシーンの静まりかえった夜の青く深い闇・・

それらの幻想的で美しい映像も素晴らしかった。





 2作目は同じ監督の「エル・スール」(1985年)。
スペイン北部で暮らす少女と、一緒にいるだけで幸せな尊敬する父。
父は水脈を探し当てる不思議な道具を持っていた。
二人の密月のピークとなるのは、花嫁のような白いドレスを着る初の
聖体拝受の儀式とそれを祝う会での父とのダンス。
その前後から父の過去や心の闇、忘れられない母以外の女性の存在を知り、
大好きだった父が見知らぬ他人のように思えて距離を感じるようになる。
やがて成長し、醒めた思春期を送っていた娘は、ある日父に誘われて
久しぶりに二人で向き合い、レストランで食事をする。
娘は父が隠していた女性の存在を以前から知っていたことを
淡々と告げ、父を動揺させる。
その隣の部屋では結婚式を挙げた花嫁がダンスを踊っている。
聖体拝受の後に一緒に踊った曲だ、とちょっと嬉しそうに言う父。
しかし娘はそっけなく父を残して立ち去ってしまう。その翌日に。。
父は生まれ育った家、自分で築いた家庭、その為に去って行った女性の
いずれとも心の繋がりを保つことができず、
帰るべき拠り所を失ってしまったのだろうか。
幼い頃に憧れた地であり父が捨て去った「南(エル・スール)」へと
娘がはじめて旅立つ所で物語は終わる。
こちらも多くは語られず、微妙に揺れる心象風景を繊細に描いていて
暗い画面や、窓や扉が効果的に使われている所も共通している。
一軒家に明りが灯るだけでノスタルジーを感じてしまうのは何故だろう。
どちらも桑原弘明さんのスコープにも通じる、大好きな世界だった。
3作目の「ものすごくうるさくて ありえないほど近い」は2011年の作品。
2001年のNY同時多発テロで父親を失った少年が、遺品の鍵に何らかの
メッセージが込められていると信じて、その秘密を探し歩く物語。
アスペルガー症候群と思われる少年と、彼と関わる人々が探索を通して
交流していくのだが、人々が意外なほど親切で温かいのだ。
その理由は終盤で明らかになるが、それ以外にも何らかの
大切なものを失った経験がある人が多いことがわかってくる。
祖父(と後でわかる)は、ドレスデン爆撃に遭い、言葉を失っている。
他人とは筆談か「YES」「NO」と書いた掌を見せることでやりとりを
している。(私の息子みたい。。)
少年の両親や祖父母は、世間的には変わり者といわれているだろう彼の
知能の高さや、熱中してしまう特徴を尊重し、人として対等に接している。
一緒に楽しめるゲームを考えて社会性を育みつつ、とても自然に関わって
いる所に何より感動してしまった。その特徴をわかってはいても、
あきれたり否定せず受け入れるのは、意外と難しい。
この映画のタイトルは、閉ざされた空間や子供の泣き声が怖い等、
発達障害やPTSDによって、周囲の人には気にならない程度のものが
とても耐えがたくなってしまう人達の、外界刺激に対する感覚の
過敏さを端的に表わしているように思う。
ホームアローンみたいな話かと思っていたら全然違っていて(笑)
自分に関わりのある話も多く、いろいろ考えさせられた映画だった。
主役を演じた少年は、クイズ番組で優勝したところをスカウトされた
という、実際に賢い子供だったとか。(@@)
そうでないとあんなに早口で大量のセリフをしゃべれないかも。。

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ちぃ

もう30年近く前(年バレちゃう〜)学生だった頃
エリセの作品が立て続けに上映されてせっせと映画館に見に行きました。
当時の私にはちょっと理解できない部分もあったりしましたが
静謐な美しさにはとっても心を打たれました。
当時のパンフレットも手元にあるなぁ・・・
レンタルが出ているのですね!ちょっと見直してみようかな^^
by ちぃ (2017-06-15 15:34) 

くまぱんだ

こんにちは~ご無沙汰しております(*^o^*)
「うるさくてありえないほど近い」は、見てみたいと思っていたので、
題名には記憶がありましたが…そんなストーリーだったのですね…!
どの映画も興味深いです~☆彡 
by くまぱんだ (2017-06-15 15:36) 

うっかりくま

ちぃ様
ビクトル・エリセ特集、映画館で見られたのですね!
私も数十年前に見たいと思ったのをやっと見ました(笑)。
評判になったけれど、あらすじを読んでも??でした。
謎な部分も多く想像の余地がある所も、雰囲気も良くて
とても心に残るお気に入りの映画となりました。
でもって、アナ・トレントがやっぱり可愛いです(^^)
by うっかりくま (2017-06-15 22:36) 

うっかりくま

くまぱんだ様
編物の腕がどんどん上がって、オリジナル品を
日々編み出されておられますね!
やる気なさそうなきのこちゃんも好きですが(笑)。
えーっと、あらすじを書くのは苦手で、偏った個人的
感想なのでそういう映画?と思われるかもしれません。
最初はちょっと主人公の言動にイラッときましたが、
その両親や祖父母の優しさに心が温まりました(^^)
一人の少年を皆で精一杯支えようとする所が良いです。
by うっかりくま (2017-06-15 22:51) 

トロル

「ミツバチのささやき」「エル・スール」どちらも劇場で観ました。人生で一番映画を観ていた時期です。水脈を見つけるダウジングの道具がとても印象に残っています。
細かいストーリーはこの日記を読んでいて思い出しましたね。
娘が父親とダンスを踊るシーンで、もうひとつわたしの記憶に残っているのは、
「田舎の日曜日」という映画です。エリセとも、アナちゃんとも関係なくて唐突にすみません…観たことあるかな?
成長したアナ・トレントの「カラスの飼育」という映画も観に行ったのですが、それこそ筋を忘れてしまったので、パンフレットをひっくり返してみたいです。
3番目のは、フィギュアで知り、タイトルが不思議なんで気になっていました。
気になっていて見逃してる映画、観たいですなあ!
やはりミニ・シアター系の作品って、魅力的。
by トロル (2017-06-15 22:52) 

うっかりくま

トロル様
読みづらい長文で疲れたのでは?すみません。。
バランスボールは仰向け、うつぶせで背中を伸ばしたり、
ぴょんぴょん跳ねて遊んだり(笑)椅子代わりにすると
体幹がしっかりする等良いんですが、かさばります。
「カラスの飼育」「田舎の日曜日」、聞いたことはあり
ますが未見です。どちらも魅力的!今度探してみます。
浮き世離れに拍車がかかりそうだけど、それが映画の
良さの1つでもありますね。
by うっかりくま (2017-06-15 23:38) 

lequiche

ええと・・・ずいぶん前に
ミツバチのささやきとエル・スールの
2枚セットを買ったんですが、
まだ未開封です。(ダメジャン ^^;)
う〜ん、そのうち見たいと思います。
by lequiche (2017-06-16 00:44) 

gf487323

訪問してくださりありがとうございます。 
今の時代、クールビズとかでネクタイもあまり売れないのかもしれませんね。
私は事務職なら私服でいいと思うのですが。 ^^;
私も外界の世界刺激に過敏ですね。 知能が高いかどうかはわかりませんけど。
3作目は興味深いですね。
by gf487323 (2017-06-16 14:50) 

うっかりくま

lequiche様
lequicheさんとビクトル・エリセ監督、ちょっと
意外な組み合わせな気が・・?(スミマセン)
購入時の勢いがあるうちに見ておかないと、積んだ
山が高くなる一方、って自分もあります(><)。
地味な作品ですが、後からジワジワ来ますヨ。

by うっかりくま (2017-06-17 00:22) 

うっかりくま

gf487323様
コメントありがとうございます。
涼しげなディスプレイは購買意欲をそそりそうです。
ネクタイといえばかつては父の日のプレゼントの
定番でしたが、夏に使わない人が増えた現在は何が
定番になっているのでしょうね。。
3作目はうまく言えないのですが、大きな災害の後は
特に、心身に傷を負った方達を守り支援する懐の深さ
が社会全体に必要とされることを痛感しました。

by うっかりくま (2017-06-17 00:47) 

ryo1216

どれも好きな映画! そして懐かしい!!
この時代だと、マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグとかロメールの四季シリーズとかも好きです
by ryo1216 (2017-06-20 02:28) 

うっかりくま

ryo1216様
ビクトル・エリセ監督、お好きでしたか(^^)。
じんわりと心に残る、美しい映画ですよね。
マイライフ・・の監督も大好きで、以前ブログで
取り上げたことがあります。もしかしてですが、
ヴィスコンティとタルコフスキーもお好きでは
ないですか??建築も好きで、かなり共感できる
ような気が。。都内在住の方がうらやましいです~。




by うっかりくま (2017-06-24 00:08) 

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